2013-10-17

いよいよ明日から富樫さんのマフラー展、始まります。
原毛(羊から刈り取った毛)の状態から一本の糸になり、
布になるまでのホームスパンの行程を、
富樫さんの作業場より覗いてみたいと思います。

原毛に付着している汚れや土、砂、油脂分を
取り除き、洗います。乾かした後、手でおおまかに
繊維をほぐしてから、道具を使ってさらにほぐします。




















カーディングという羊毛をほぐす作業に使う道具には、
ハンドカーダー(写真上)と、ドラムカーダー(写真下)があります。

主に少量の原毛をほぐす時に使うハンドカーダー、
表面に針のついた道具を両手に持ち、原毛を乗せて
こするように撫でるように、梳かしていきます。
羊毛の風合いを残すようにそっと、でも適度な力で
繊維を滑らかにしていきます。
雲みたいにわたあめみたいに、ふわふわに変化する
様子を手と目で感じることができます。
最後はくるくるっと巻いて、細長い固まりにします。

ドラムカーダーは羊毛が触れる面積がハンドカーダーより遥かに
大きいので、量も一度に沢山できます。表面に針の付いた、
大小二つのローラーが回って繊維が整えられていきます。
ドラムから下ろした様子。
日光に当たると羊毛がきらきらとしているのが分かります。
羊の体から離れても、まだまだ生きています。
カーディングは、紡ぎの糸の仕上がりが決まる肝心要の作業です。

そして、糸紡ぎです。足でペダルを踏みながら、
車輪を回転させます。ねじりを加えながら一本の糸にしていきます。
経(たて)糸を整えます。デザインに合わせて、
糸を何本用意するか計算し、糸がからまらないように
順番に並べて切り揃える作業。
編み物や洋裁と比べるととてもシンプルです。
出来上がりの長さと幅、密度を決め、織り縮み分を加え、
経糸の本数を整経台に糸を掛けていきます。
経糸を整経台から下ろし、織り機にかけます。
そして、ようやくここから織り始めます。
ここまでで、見上げれば山の頂上までもう一息の、
6合目〜7合目を登り終えたところ。

写真はヘリンボーンの模様です。
一枚目の終わりと二枚目の始まりの部分。
機にかけたまま糸を撚って布の端の房を作ります。

長い工程を、手短にご紹介してしまいましたが、
ごしごし洗って、ざざざっとカーディングをして、
かたかたと紡がれて、かたんかたんと織り上げられていく。
手の中で、ゆっくりと糸から布になっていく、
羊の音までも届けられたらと思います。

こうして生まれた富樫さんのマフラーがついにやってきました。
畳んだり、ハンガーに掛けたり、只今準備中です。
一枚の布は様々な表情を見せてくれます。
でもやっぱりくるくると巻いている姿がこのマフラー達にはぴったりです。
外の風はひんやりしてきて、そろそろマフラー日和です。ぜひご覧ください。