2012-04-05

先日はお休みをいただき、北秋田の八丈織り、大館の曲げわっぱ、弘前のあけび細工、黒石のこけし、作る方とその工房を訪ねる旅へ行ってきました。
今回訪れたどれもに共通するのは、自生する天然のものを材料を元に手作業で生み出されていること。形にするまでに実に長い長い時間を要します。

青森から秋田に向かうのは初めてのことで、旅の中の遠足のような気分でした。南下するに連れ、車窓から眺める景色の中でも空気が変わっていくのがよく分かります。

秋田八丈を日本で唯一継承される工房は、カモシカも熊も出るよ。という山奥にありました。ハマナスの根を煮出して染めた糸で織り上げられる草木染め。黄色や茶色を中心とした渋い色調ですが、洗うほどに使うほどに輝きを増し、どの角度で見るか、陽ののぼり具合によっても全く違う表情が見られました。実際、織り上げてから、2,3年後に何とも言えない金色の輝きを見せてくれるのだそうです。
ハマナスの根を煮出すのに4時間以上、織り機にセットするのは一日以上掛かる作業。お母さんの手はつやのある力強い手の平でした。
初めての訪問にも関わらず、とっても快く迎えてくださり、居心地が良くなってすっかり時間を忘れてしまいました。
すぐ裏手には山が、工房の前には小さな川が。水のおいしいところです。

写真は秋田内陸線の阿仁合駅で。
秋田内陸線もまた最初の構想から70年の歳月をかけて大館から鷹巣までの29駅が結ばれたそうです。
秋田杉を掻き分けるように山を切ってガタゴトと走る一時間に一本の一両列車。
雪を割って顔を出すふきのとう、遠くにぽつんと立つ一本の木、見落としそうなくらい小さな景色からも、多くのことを想像させられます。行って見なければ分からないことがたくさんあります。

訪れた先々で頻繁に耳にしたことは、よく撫でてあげてください、という言葉。
使う度に風合いが増し、人に寄り添うものになっていくということ。
心動かさずにはいられない手仕事を(列車も)覗かせていただいて、とても2日間の出来事とは思えないくらいで、気持ちがまだ旅から戻って来てませんが、今日から営業しております。

一緒に巡った青森の村上さんから裂織を分けていただき、早速店頭に並べました。
毎回どんな色が届くが楽しみです。背筋が伸びるような織り上げられたばかりの新しい触感です。裂織もまた使ううちにどんどん手に馴染んで優しさが増していきます。毎日見ていても昨日とは違う色を発見します。もうすぐ春ですね。